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製品・技術情報

初歩の電波(無線と電波について)

  • 2010.03.02

第3章 無線装置

3-1) 送信機の例(アンテナも含む)

以下に構成例を図で示します。実際の装置とは異なりますが、イメージ的に最低限必要なパートを挙げ、それぞれについて説明します。

① 入力

電波に乗せて送りたい信号や情報を入力する部分です。
入力としては、アナログ、デジタルの形式が考えられますが、具体的には、音声、音楽、映像、データ、コントロール信号等が上げられます。例えば音楽を考えますと、一つには従来から使用されているアナログ形式がありますが、デジタル化されたものを入力する場合はデジタル形式になります。コントロール信号は、デジタル化又は、場合によってはパルスの形式(短時間に急峻に変化する単発の信号)にして情報を入力します。実際の接続に際しては、インタフェースも重要になります。

② 発振器

無線の電波として送りだす高周波の基となる信号を発振します。
電波は、世界的に又は国により用途も含めて周波数が割り当てられていますのでその規格に合う周波数を選ぶ必要があります。電波の利用者(主に発射する場合)が、勝手な周波数を使用すると違法になるばかりではなく、お互いに妨害を与えたりして安定な通信が出来なくなるか、全く使用できなくなります。また同時に安定な通信には、発振器の周波数安定度、周波数の精度も重要な要素となります。 また実際には、送信機の内部で一つの周波数だけを使用する事は稀で、多くの周波数やチャネルを持つことになります。チャネル毎に精度の高い発振器を多数持つにはスペース、価格等の面で問題がありますので、一つの基準周波数から希望するいくつもの周波数をデジタル的な合成により生成する技術が利用されています。これは、周波数シンセサイザーと呼ばれています。

③ 変調・制御

高周波に信号を載せること、及び通信の制御を行います。
変調の方式は多数存在し、入力信号に応じて基本的にはアナログ変調(AM、FM、PM変調等)、デジタル変調、パルス変調等があります。
制御に関しては、携帯電話等の狭いエリアで何台もの携帯電話が、呼び出し、通話をする場合の複数のチャネルを使用して行う制御、システム管理が例として上げられます。

④ 増幅

変調された高周波を必要な電力まで増幅します。
ラジオ放送局の様に100kW程度の大きな出力を持つものや、無線LANのように10mW/MHz(0.01W/MHz)に制限されているものもあります。法律(電波法)に則り必要十分な電力まで増幅する必要があります。自分の無線機だけが大きな電波を出すと他の局に妨害を与えることになり、限られた資源の有効利用となりませんので最大出力は、十分に守る必要があります。 また信号は、忠実に増幅する必要があります。例えばステレオアンプにおいて忠実な増幅が出来ない場合(性能が悪い場合)には、音量を上げると音が割れたり、変な音が混じったりして非常に聞きにくい音になります。電波の場合にも同じようなことが考えられ、忠実に増幅できないと、ステレオアンプの場合で言う変な音が混じる部分では、予定していない余計な電波が出力されることになります。この場合通常は、電波の幅(帯域)が広がることになり、他の無線局に迷惑をかけることになります(電波法では、品質の規定があります)。

⑤ 送信アンテナ

電波を空中に効率よく発射する部分です。 アンテナは、周波数、どのような偏波(電波が飛ぶ時の偏り)を使用するか、指向性(電波を飛ばす方向のシャープさ、角度)、アンテナゲイン(方向のシャープさの最大値)、また使用する電力、用途等により異なります。無線機とアンテナ間の距離が長い場合には、使用するケーブルにも注意が必要で特に、ケーブル損失(電力が途中で消耗する度合い)、定在波比 : VSWR(信号伝達の際の進行波、反射波の関係)、ケーブルの特性インピーダンス(ケーブルの高周波における等価的な抵抗値)に留意します。またアンテナの工事方法(風に対する強度、電気的な接地、雷対策、腐食予防)、アンテナの耐電力(どの程度の電力供給まで安全に動作するのか。通常耐電力を越えると火花が発生して焼損します)が重要になります。通常アンテナゲインが大きいと、それに対応して送信出力電力を下げることが出来ますが、電波を送る方向を絞る必要があります。

3-2) 受信機の例

受信機の構成図の例を以下に示します。受信する場合にも特定の周波数を扱いますので、現実には発振器を使用して基準に使用しますが、ここではサブ的な扱いと考えて省略してあります。

⑥ 受信アンテナ

空中を飛び交う電波を受けて効率よく電気信号に変換します。
通常送信アンテナと同じような注意が必要となりますが、耐電力は特に考慮する必要はありません。受信アンテナはなるべくノイズの少ない場所に設置し、また伝送ケーブルにノイズが乗らないように注意する必要があります。アンテナからノイズが入ると、それを受信機内部で削減するのは難しくなります。
受信感度を十分に確保したい場合(特別に小さな信号を受信したい場合)には、例えば市街雑音の少ない山奥にアンテナを立て、なるべくアンテナの近くに受信機を設置して、受信機の出力信号をリモートサイトに送る方法があります。古い時代には電話回線を使用しておりましたが、最近ではインターネットを使用して受信機の詳細な調整まで含めて遠隔制御が可能になっております。

⑦ チューニング

アンテナに入る多くの電波信号や雑音から必要な周波数の成分だけを受信するように選び出す部分です。
ここでどの程度シャープに信号を選択できるかで、総合的な受信機の性能が大きく異なりますので非常に重要な部分です。優れた受信機は、この部分が非常にシャープですが、価格も上がります。 カーラジオ等では、AMやFMの受信に際してオートチューニング機能が付いているものがあります。これはある周波数の幅で自動的に受信周波数を連続的に動かして行き、ある程度の強度の信号が受かった所で自動的にストップします。希望した周波数の場合にはそのままとし、そうでない場合には次を選ぶことが出来ます。

⑧ 増幅

受信の信号波は、非常に弱いために増幅が必要です。
アンテナに受かる電波は極端に小さいのでそのままでは、次のステップの復調が出来ないために、そこで取り扱えるレベルまで十分に増幅する必要があります。大きな信号はそれほど増幅する必要はありませんが、小さな信号は非常に大きく増幅する必要があり、結果的には得られる出力が常に一定になることが求められます。
増幅する倍率は、電力比で考えて、1,000,000倍(100万倍)程度から100,000,000,000倍(1000億倍)程度と驚異的な倍率で増幅する必要があります。増幅する場合に必要な条件として、忠実に増幅する事が求められます。その理由は、これだけの倍率で増幅された場合に、色々な信号が混じりあって増幅されるためにもし歪みがあると不要な成分を発生することとなり、結果として雑音を含む事と同じになりますので、次の段階の「復調」で品質の高い復調が出来なくなる場合があります。

⑨ 復調

送信機で電波に載せた信号を取り出し元に戻します。
信号が大きくなれば復調出来るとしても、小さな信号を大きく増幅した場合にはどうしてもノイズの影響を無視できません。信号の中にノイズの割合が増えることで元の信号を取り出すことが出来ないことがあります。従ってこれ以前の処理でいかにしてノイズを除去するか、いかにしてノイズの混入を防ぐかが非常に重要です。
ここでは、送信機側で色々な方式で変調を行った信号を、逆の方法を用いて元の信号を復元します。その種類は、変調の種類と同じようにたくさんあります。

⑩ 出力

希望の形式で取りだします。
適正な信号のレベルと、インタフェースに合わせた形式で出力する必要があります。テレビの場合には、スピーカーに音声と音楽を、液晶パネルに画像を、産業機器に関する場合でしたら、制御信号を次のステップの装置に送ります。