ここでは、これまでに電波に関連する概要説明をした中で分かりにくい内容をさらに詳しく、テーマを絞って説明します。多少難しい部分も含まれますが、これにより理解が深まり、さらに興味を持ってもらえるように願っております。
携帯電話のように、ある特定の割り当てのある周波数帯域(無線通信路)を利用者全員が共有して複数ユーザが同時にアクセス(電話では、ダイヤルし通話をする)する方式には、大きく分けて以下の種類があります。
右図のように、割り当て周波数帯域を分割することで複数チャネルを確保して多重アクセスを行う方式です。
用途例は、携帯電話、自動車電話等です。
右図のように、割り当てのある周波数帯域を、種類の異なる符号化で得られる複数のチャネルを確保して多重アクセスを行う方式です。複数のチャネルは、全て同一の周波数帯域を使用しますが、符号化(符号化IDの種類は多数あります)によって使用する帯域全体に、ある法則に基づいて信号をノイズに近い形に拡散し(一般的にはスペクトラム拡散方式)、受信時にはその法則に基づいて集積しますので、伝搬時にお互いのチャネルは干渉しない、また、外来ノイズがあっても影響を受けにくい方式です。
用途例は、携帯電話です。
右図のように、割り当てられた一つの周波数帯を時間的に分割することで複数のチャネルを確保して多重アクセスを行う方式です。時間で分割すると、電話の場合には、音が切れて通話が成り立たないのではないかと思われますので、この辺の説明は、この後のTDD(時分割全二重通信)の所で行います。
用途例は、携帯電話です。
右図のように、一対のケーブルを使用して、一方向に信号を送る場合は、「片方向通信」と言います。
お互いがコミュニケーションをとる場合に、逆側からも送ることが必要になりますが、その場合は「双方向通信」と呼びます。ケーブルを一対だけ使用する場合には、下記の方法がとられます。
トランシーバで通話をする時のように、自分が話をする時は送信ボタンを押して、自分が話を終ったらボタンを離します。ボタンを離すと自動的に受信状態になります。ただし、お互いが同時に送話したい場合、双方が送信ボタンを押すことになりますので、お互いが聞こえないと言う欠点があります。このような通信で、二重通信(双方向通信)は可能ですが、お互いに切り替える操作が必要になるために、全自動で行う二重通信と比較して「半二重通信」と呼びます。
また、完全に自動で二重の通信を行うことを「全二重通信」と呼び、現在はこれが主流になっています。
携帯電話等も含めて、無線で全二重通信を行う基本的な方式を以下に説明します。大きく分けて以下の2種類になります。無線通信方式でも出てきましたが、周波数を分割する方法と時間を分割する方法です。
右図の様に、f1とf2のチャネルにそれぞれR(受信)とT(送信)の別々の周波数を設けます。これを、それぞれ受信用と送信用にして使用すれば、全二重通信が可能になります。
右図の様に、一つの周波数をある時間周期で分割して、送信(T)、受信(R)を切り替えながら双方向の通信を行います。一見、これでよさそうに見えますが、電話の場合に時間で区切られたら、音が切れてしまって十分な会話が出来ないような感じがします。相手には自分が話をしていることの半分しか届いていないような感じがします。しかし、最近の携帯電話はこちらのTDDを使用するのが主流になっています。以前はFDDでした。
衛星通信利用の様な会話では、相手に届くのと相手から届く会話に時間のずれが発生しますので、かなりゆっくり話すか、遅れることを想定しながら話をしないと苛立ってくることになります。それでは、どの程度の遅延時間なら問題ないかですが、一般的に200m秒(0.2秒)以内と言われています。
時分割の全二重通信についてですが、例えば以下の様な送り方、受け方をしたらどうでしょうか。
説明しますと次のようになります。
この様に、周波数分割でも時間分割でも全二重の通信が可能になります。