ワイヤレスは現在、世界中で誰でもが、自宅、オフィス、カフェ、ホテル、空港などあらゆるところで簡単に、Wi-Fiホットスポットを通してインターネットへアクセスすることができます。しかし一方、産業オートメーションアプリケーションの分野においてワイヤレスは、さほど浸透していません。そこで産業オートメーションアプリケーションにワイヤレスを実現するために必要な要件および利点について言及します。
産業用オートメーションアプリケーションにワイヤレスを使用する場合の欠点は、産業オートメーションが要求する厳しい信頼性要件を満たすことが難しいことにあります。一般的に、日常のオフィスアプリケーションサービスにおいて発生するワイヤレスの中断は、単なる迷惑として見なされる場合が多いのに対して、クリティカルなオートメーションアプリケーションでは、ネットワーク障害が安全性と生産性の両方に著しい影響を及ぼすため、信頼性が非常に重要であるのはこの理由からです。ワイヤレスが以前に比べて頻繁に導入されているという事実から、オペレータは、これらのネットワークの信頼性が保てることを確認する必要があります。アプリケーションにおいて同じワイヤレスの中断でも、ファクトリのオペレーションとしては容認できない事態を引き起こす可能性があります。ネットワーク障害は、安全性と生産性の両方に著しい影響を及ぼす可能性があるため、結果的に大きな経済的損失をもたらす可能性があります。この記事では、ワイヤレスネットワークの信頼性を保証するために注意すべき重要な要素について説明すると共に、Moxaが提供するソリューションを紹介します。
産業用オートメーションアプリケーションにおいてワイヤレス通信をインプリメントする際には、特別な配慮が必要とされます。例えば、IEEE 802.11nをサポートするワイヤレスデバイスを使用することによりデータ送受信の帯域を広げ、通信のスピードを向上させることができます。これはデバイスがMIMOをサポートしていることを意味します。さらに、ワイヤレスデバイスは、異なる種類の電気障害を処理できる設計がされている必要があります。また、多くの産業オートメーションアプリケーションでは、AGVのようなムービングオブジェクト上にワイヤレストランスミッタをクライアントとして搭載するためAP間の高速切替に必要なローミングが重要な要素となります。
理想的には、ワイヤレストランスミッタから輻射される電波は、何ら妨害を受けずに意図されたレシーバでエラーのない受信がされることが望ましいことが当然ですが通常、一般家庭、コーヒーショップまたはオフィス環境で何らかの要因で障害が発生する場合があります。しかし、このエラーは、多くの場合、致命的な問題にはなりません。一方、産業オートメーションサイトのあるファクトリ環境においては、多くの金属物体による障害物が存在するため信号を劣化させる深刻な問題が発生する可能性があります。特に、望ましくない影響を及ぼすものとしては、大規模な物体、小さな物体による散乱、鋭くとがった物体からの回析、ソリッド物体の陰、および走行する移動体のドップラー効果があります。また、マルチパス効果の出現は、多くの障害に直面します。即ち、環境からワイヤレス信号が複数の信号に分割され異なるルートの伝播の影響を受けます。そしてレシーバには、意図したものと異なる時間で到着する可能性があります。その結果として信号は、送信で存在した情報が受信側ではもはや解読することができない程度まで悪化します。
そこでMIMOの出番となります。MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output=トランスミッタが "input"、出力となるレシーバが "output")は、IEEE802.11n規格でサポートされた本質的な新しい技術の1つです。MIMOは、複数のアンテナと複数のストリームがトランシーバとレシーバ両方の要求により動作します。このMIMO技術を使用すると2つの方法に役立ちます:(1)見掛け上のデータレートは、複数のアンテナを組み合わせデータ送受信の帯域を広げることで300 Mbpsと同じくらい、またはそれ以上のスピードに増加させることができます。(2)レシーバ側でクレバーな信号解析と再組合せがマルチパスの影響を排除することができます。
ファクトリ環境は、ワイヤレスデバイスの損傷およびワイヤレス伝送を中断させる可能性がある苛酷な状況が存在します。3つのタイプの電気障害が産業オートメーションアプリケーションにとって特に重要視とされます。
これらの因子の影響は、例えば、電圧の立ち上がりや他の要因からのノイズ干渉を隔離する電源やアンテナのアイソレーションといった高いノイズを回避する設計がされた製品を使用することによって軽減することができます。さらに、ESDとサージの高い保護およびEFTのハードウェア設計は、同じく重要となります。
一般的にファクトリオートメーションのアプリケーションにおいて実装される無人搬送車(AGV)およびシャトルは、オペレータが低コストで高効率化の恩恵を享受することができます。配線とスペースの制約を回避することができるワイヤレスを使用するために、オペレータは、これらのモバイルアプリケーションの制御および監視にシームレスなワイヤレスローミングをサポートするワイヤレス製品を考慮する必要があります。
複数のアクセスポイント(AP)を設置したモバイルアプリケーションでは、ローミング(またはハンドオーバー)は、クライアントが2つ以上のアクセスポイントの間を移動する時に重要な要素となります。即ち、ローミングメカニズムに影響するメカニズムのスピードは、プロジェクトの成功に重要な役割を担います。クライアントの移動体が物理的に異なる2つのAP間を移動するときに最初のAPの信号強度の受信が低下すると、次に、第2のAPの信号強度の受信感度が増加します。即ち、標準的なローミングメカニズムは、最初のAPの受信がフェードアウトする寸前に第2のAPのスキャンを始めます。そして、そのプロセスには、3~5秒以上の処理がかかります。しかし、このような長いハンドオーバータイムは、一時的に制御信号への接続を失った無人AGVから、深刻なダメージを引き起こす可能性があり、パケットロスをもたらします。
パケットロスを回避するために、オペレータは、完全な切断を待たずに、強い信号強度のAPを積極的に検索するシームレスなローミングメカニズムを必要とします。実際にハンドオーバータイムをミリ秒レベルにまで低減することができるシームレスローミングは、シームレスな伝送および制御の利点を提供します。
MoxaのAWK-1131Aシリーズは、ファクトリアプリケーションに必要な高い信頼性を備えた新しい802.11nワイヤレスAP/クライアントソリューションを提供します。AWK-1131Aは、ESD、サージ、およびEFTの、より高いレベルの保護をサポートし、電源、イーサネット、および工場出荷時の環境に見られる電気障害からあなたのワイヤレス接続を保護するためのアンテナポートのノイズアイソレーションを提供します。しかも、複数のデータストリームの送信および受信を改善する802.11n MIMO技術によりマルチパスの影響は、もはや問題ではなくなりました。さらに、Moxa独自の優れた Turbo Roaming技術は、シームレスなワイヤレス通信のために150 ms以下のハンドオーバーを提供することができます。AWK-1131Aは、コンパクトな筐体に設計され、また、スマートな機能を供えています。さらに、ファクトリアプリケーションのための継続的なワイヤレス接続を現実化します。
ファクトリ環境でのワイヤレス通信を実現するには、特別な留意点を必要とします。近代的なファクトリは、生産ラインに堅牢で産業グレードのロボットアーム、オートメーションに必要な様々なセンサおよびアクチュエータおよび効率性を高めるための無人のAGVを含む多くのマシンや機器を使用しています。
このWhite Paperでは、ファクトリ環境でのシームレスなワイヤレス通信を実現するために留意すべき事項について言及します。