1. ホーム
  2. 製品・技術情報
  3. RS-422/485について

製品・技術情報

RS-422/485について

  • 2009.12.10

アプリケーションノート / 第1章 概要

最初に

このアプリケーション・ノートの目的は、RS-422とRS-485の基本となる構成要素を示すことにあります。また技術的な詳細を十分に説明する予定ですので、システムデ・ザイナーは、データシステム設計の全ての重要な側面を熟考することになります。RS-422とRS-485の双方共に平衡型のディファレンシャル信号を使用するデータ送信システムですので、同じアプリケーション・ノートの中で両方のシステムを説明することが適切だと考えます。一般的な用語であるRS-422とRS-485は、このアプルケーション・ノートの中では、EIA/TIA-422 とEIA/TIA-485規格を示すものとして使用します。

データ送信信号
不平衡型ライン・ドライバ

不平衡型データ送信システムRS-232Cで送信される各信号は、信号グランドに対する電圧としてインタフェース・コネクタに出力されます。例えば、DTE(Data Terminal Equipment)装置からの送出データ(TD)は、DB-25コネクタ上の7番ピン(信号グランド)に対して2番ピン上に出力されます。データが±5~±15ボルトの振幅で送られる時、このラインがアイドルで負のレベルと正のレベルの間で交互であれば、この電圧は、負になります。通常RS-232Cレシーバは、(図1.1)に示されるように +3 ~ +12ボルトと -3 ~ -12ボルトの電圧の範囲で動作します。

(図1.1)RS-232Cインタフェース回路

平衡型ライン・ドライバ

平衡型のディファレンシャル・システムでは、ドライバで生成された電圧は、一つだけの信号を送信するペアーの信号ラインに出力されます。(図1.2)は、平衡型ライン・ドライバの図示シンボルと出力する電圧を示します。平衡型ライン・ドライバは、AとBの出力端子間で2~6ボルトの電圧を生成し、信号グランド(C)の接続を行います。信号グランドへの適切な接続は重要ですが、データ・ラインの論理状態を決める平衡型ライン・レシーバで使用されることはありません。平衡型ライン・ドライバは、また"Enable"信号と呼ばれる入力信号端子を持つことが出来ます。この信号の目的は、ドライバをその出力端子A、Bに接続することです。もし"Enable"信号が、OFFの場合、ドライバは送信ラインから切り離されていると考えることが出来ます。RS-485ドライバは、"Enable"信号端子を持たなければなりません。RS-422ドライバは、この信号端子を持つ事は可能ですが、必ずしも要求されません。ライン・ドライバの未接続または"ディゼーブル"状態は、通常ドライバの"トライステート"(注1)状態と呼ばれます。

(注1)用語"トライステート"は、"1"と"0"の出力状態に加えてRS-485ドライバの第三の出力状態であることから生まれました。

(図1.2)平衡型ディファレンシャル出力ライン・ドライバ

平衡型ライン・レシーバ

平衡型のディファレンシャル・ライン・レシーバは、二本の信号入力ラインA、B上の送信ラインからの電圧状態を検知します。これはまた、適切なインタフェース接続を行うのに必要とされる信号グランド(C)も持ちます。(図1.3)は、平衡型のディファレンシャル・ライン・レシーバの図示シンボルです。(図1.3)は、また平衡型ライン・レシーバに重要な電圧も示しています。もしディファレンシャル入力電圧Vabが、+200 mVよりも大きい場合、レシーバの出力端子は、特殊な論理状態になります。もし入力電圧が、-200 mV以下になっている場合、レシーバの出力端子は、反対の論理状態になります。平衡型ライン・レシーバが検知しなければならない入力電圧は、(図1.3)に示されます。200 mV ~ 6 Vの範囲は、送信ライン上に減衰が発生するために必要とされます。

(図1.3)平衡型ディファレンシャル入力ライン・レシーバ

EIA 規格 RS-422 データ送信

"平衡型電圧ディジタル・インタフェース回線の電気的特性"と呼ばれるEIA規格のRS-422は、RS-422インタフェース回線の特性を定義します。(図1.4)は、通常のRS-422の4線式インタフェースです。5本の導線が使用されている事に注意して下さい。各々の発生器またはドライバは、最大10のレシーバまで駆動出来ます。ラインの2つのシグナリング状態は、次の様に定義されます。

  1. ドライバのA端子がB端子に対して負の場合、ラインは、バイナリで1(マークまたはOFF)状態です。
  2. ドライバのA端子がB端子に対して正の場合、ラインは、バイナリで0(スペースまたはON)状態です。

(図1.4)一般的なRS-422 4線式ネットワーク

(図1.5)は、ラインが"アイドル"または"OFF"の状態の時のRS-232Cから RS-422への変換時の平衡型ラインの電圧状態を示します。またこれは、RS-422システムの"A"端子と"B"端子の関係と、沢山の種類の器機で使用されている"-"と"+"の端子のマークの関係を説明しています。(図1.5)に示されるのと同じような関係は、RS-485システムに対しても適用されます。RS-422は、±7ボルトのコモン・モード電圧(Vcm)に耐えることが出来ます。コモン・モード電圧は、信号グランドに対する"A"端子と"B"端子の平均電圧として定義されます。

(注1)"アイドル"状態では、どの端子が"A"で、どれが"B"であるかを決める事が出来ます。

(図1.5)RS-422またはRS-485装置上のEIA規格 "A"端子、"B"端子と、"+"、"-"識別との関係

EIA 規格の RS-485 データ送信

RS-485規格では、平衡型送信ラインが、共同回線やマルチドロップモードで共有使用することを認めています。ドライバ/レシーバの32のペアーがマルチドロップ・ネットワークで使用できます。ドライバとレシーバのほとんどの特性は、RS-422と同じですが、ドライバとレシーバが許容できるコモン・モード電圧Vcmの範囲は、+12ボルトから-7ボルトに拡張されます。ドライバは、ラインから切り離すことや、トライステートにすることが出来ますので、トライステート状態の間はこのコモン・モード電圧範囲に耐えることになります。トライステート機能を持つものの中でRS-422のドライバが、+12ボルトから-7ボルトの完全なVcm電圧の範囲に耐えないことがあります

(図1.6)は、一般的な2線式のマルチドロップ・ネットワークを示します。送信ラインは、ラインの両端で終端されていますが、ラインの中間であるドロップ・ポイントでは終端されていませんので注意が必要です。終端は、高速なデータ・レートの時や長いケーブルを使用する時にだけ行うべきです。終端に関しての詳細の説明は、このアプリケーション・ノートの第2章で行います。またレシーバが-7ボルトから +12ボルトの範囲内で受け入れる必要のあるコモン・モード電圧を保持するために、RS-485システムでは、信号グランド・ラインの使用が薦められます。グランドに関してのこれ以上の説明は、このアプリケーション・ノートの第3章で行います。

(図1.6)一般的なRS-485 を使用した2線式マルチドロップ・ネットワーク

RS-485ネットワークは、(図1.7)に示される様に4線式モードでも接続が可能です。4本のデータ線と追加の信号グランド線は、4線式接続で使用されますので注意して下さい。4線式ネットワークにおいて一つのノードが、マスター・ノードでその他の全てがスレーブ・ノードになる必要があります。このネットワークは、マスター・ノードが全てのスレーブと通信するように接続します。全てのスレーブ・ノードは、マスター・ノードとだけ通信を行います。このネットワークは、ミックスしたプロトコルでの通信に関して機器にいくつかの特徴があります。スレーブ・ノードは、マスターへのその他のスレーブの応答を見ていませんので、スレーブ・ノードは、その他のスレーブ・ノードへ間違って応答する事はありません。

(図1.7)一般的なRS-485 を使用した4線式マルチドロップ・ネットワーク

RTSを使用したRS-485装置のトライステート制御

前に説明したようにRS-485システムは、特定のノードが送信していない時に送信ラインから接続を切ることが出来るドライバを持つ必要があります。RS-232CからRS-485への変換器、またはRS-485シリアル・カードでは、RTS(Request to Send)信号を用いて行い、非同期のシリアルポートからRS-485ドライバをイネーブルにするのに使用します。RTSラインは、RTSラインをハイの状態(論理 1)にセットすることでRS-485のドライバを有効にするように、RS-485ドライバの"enable"に接続します。 RTSラインをロー(論理 0)にすることでドライバをトライステートにします。これにより実際にドライバをバスから切り離し、他のノードが同じペアー線を通して送信出来るようにします。(図1.8)は、一般的なRS-232CからRS-485へのコンバータのタイミング・チャートを示します。波形は、VRTS波形がデータVSDよりも狭い場合に何が起きるかを示します。これは通常の状態ではありませんが、データ波形の一部の欠落を説明するためにここに示されています。RTS制御が使用される場合、RTSはデータが送られる前に確実にハイにセットされることが重要です。またRTSラインは、最後のデータ・ビットが送られた後にローにセットされる必要があります。このタイミングは、シリアルポートを制御するために使用するソフトウェアで行われ、コンバータで行われる訳ではありません。

RS-485ネットワークが2線式マルチ・ドロップのライン・モードで接続される場合、それぞれのノードのレシーバは、ラインに接続されます(図1.6を参照)。レシーバは、自分の送信データのエコーを受信するように設定することが可能です。これは、システムによっては必要であり、別の場合には邪魔なために不要です。レシーバの"enable"機能をどのように接続するか決める場合は、コンバータのデータシートで確認して下さい。

(注1)ここに示す電圧は、ライン上のその他のデバイスにより決まります。
(注2)ピークの電圧は、全て概略の値です。

(図1.8)RS-485ドライバとレシーバのRTS制御を使用した
RS-232CからRS-485へのコンバータのタイミング・チャート

RS-485デバイスの送信データの制御

RS-232C から RS-485 へのコンバータやRS-485のシリアル・カードの多くは、特殊な回路を備えており、RS-485ドライバを有効にするためにデータ信号から起動されます。(図1.9)は、このタイプのコンバータを制御するために使用される、重要な信号のタイミング・チャートです。送信データ・ラインは、最後のビットの後に一定の時間、通常は1文字分の長さで無効になります。この時間が短すぎる場合には、送信されるそれぞれの文字の一部が欠落します。もしこの時間が、長すぎる場合には、ノード(送信データ・コンバータを使用して)がデータ受信の準備が出来る前に、システムは、送信から受信にデータ・ラインの向きを変えるように準備しようにします。このケースの場合に、応答の最初の所で一部(または完全な文字)を消失します。

(注2)ここに示す電圧は、ライン上のその他のデバイスにより決まります。
(注2)このタイミング時間は、タイミング回路の素子で決まります。この時間のスタートは、各々のデータ・ビットの先端で決まります。
(注3)ピークの電圧は、全て概略の値です。

(図1.9)RS-485ドライバとレシーバのSD(Send Data)制御を使用した
RS-232CからRS-485へのコンバータのタイミング・チャート