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初歩のZigBee

  • 2010.05.13

第5章 : さらなる理解へ

ここからは、これまでの概要に加えてもう少し詳細の内容に関して、さらに深い理解が得られるようにテーマ毎に説明を行います。

5-1) デバイスの種類

ZigBeeには、物理的/論理的に見て5種類のデバイスが存在しますので、ネットワークを構築する場合にその特性を活かすように注意する必要があります。それらは、下図に示すように「FFD、RFD、コーディネータ、ルータ、エンドデバイス」の5種類となりますが、以下にそれぞれを説明します。

ZigBeeにおける物理デバイス
物理的に異なるデバイスとして以下の2種類が存在します。
1) FFD(Full-Function Device : フル機能デバイス)
ZigBeeの機能を全て備えたデバイスですので、どの様な用途にも適用できますが、場合によっては過剰性能になります。またその場合にどうしても消費電力が多くなります。
2) RFD(Reduced-Function Device : 機能限定デバイス)
消費電力や価格を下げるために一部の機能を省いたデバイスですが、十分なメモリ等を持っていないために例えば以下で説明しますルータとしての利用ができません。エンドデバイスとしての利用に適します。
ZigBeeにおける論理デバイス
役割によって論理的に分類されるデバイスのことで、以下の3種類が存在します。
1) コーディネータ
ネットワークの中に必ず1台存在し、ネットワークの外部へデータを流したり受け取ったり、またネットワークの管理機能を持ちます。管理機能としては、ネットワークの立ち上げ、デバイスの加入/離脱/再加入、論理ネットワークアドレスの割り振り、ルーティング、ルーティングの保守、セキュリティレベルの設定等があります。
2) ルータ
複数段数に渡ってデータの転送を行うマルチホッピングを行う場合に、効率よく安定に目的のノードに届くように制御します。使い方により冗長性(リダンダント)を持つことも可能です。
3) エンドデバイス
エンドデバイスは、ネットワークの末端に位置しますが、2段を超えてデータの転送はできません。
物理デバイスが持っている機能
機能 FFD(フル機能デバイス) RFD(限定機能デバイス)
コーディネータ ○ ×
ルータ ○ ×
エンドデバイス ○ ○
論理デバイスが持っている機能
機能 コーディネータ ルータ エンドデバイス
ネットワーク立ち上げ ○ × ×
ルーティング ○ ○ ×
ビーコンの発行 ○ ○ ×
管理範囲 全てのノード 子ノード 自身
5-2) ネットワークトポロジ(ネットワークの接続形態)
(1) PtoP(Peer to Peer)型
P2Pとも表示しますが、この型は一対一で通信します。右側のエンドデバイスは、ルータでも使用できます。
(2) スター型
コーディネータが中心になってルータやエンドデバイスは、星が照らす様に接続されます。この場合にエンドデバイスやルータは、コーディネータと直接通信を行うことになります。
(3) メッシュネットワーク
ルータが網の目の様に接続され必要に応じてそれにエンドデバイスが接続されます。この接続は、ポイントからポイントまでを考えると経路が多数存在することになりますのでもし使用しようとしている経路に不具合があった場合でも、別の経路を通って通信することが可能な冗長性を持つことができます。
(4) クラスタツリー型
薄い橙色の枠がクラスタを示し、その中にツリー構造のネットワークが構成されます。エンドデバイスを何台か接続しますとこのように構成になりがちです。接続延長のキーとなるのがルータです。
5-3) ルーティング

ルータには、経路を選択するためのルーティングテーブルが作られ、宛先のアドレスが分かればその表によってホップ数(ルータの段数)が少なく、通信品質の高い経路を選んでデータが転送される仕組(アルゴリズム)があります。

ZigBeeでは、経路選択アルゴリズムは、AODV((Ad hoc On-Demand Distance Vector))を採用しております。英文の中のAd hoc(アドホック)は、ラテン語の"ad hoc"で、「一時的な、この問題に限って、特別な」といった意味を指します。On-Demandは、要求により行うとの意味です。Distance Vectorは、宛先アドレスが分かる時にそこまでの距離(ベクトルの情報)を示します。従ってZigBeeでは、データを送りたい場合に、一時的にルーティングテーブルを求め、そのテーブルによって効率的にデータを転送する方式を採用しています。

AODVでは、制御メッセージとして、RREQ(Route Request : ルートの要求)、RREP(Route Reply : ルートの応答)、RERR(Route Error : エラー)、RREP-ACK(Route Reply Acknowledgment : 応答の認識)の4種類が使われます。AODVでは、各ノードがパケットを次にどこに送ればよいかの情報を持っていますが、パケットには転送に必要な経路情報は記載されておりません。ある宛先に送るための経路が必要になったら経路を見つけるために、ネットワークにRREQをブロードキャスト(ネットワーク上の全てのノードに送ること)します。希望の宛先にRREQが届くとその宛先は、RREPを送信元にユニキャスト(一対一の伝送 : 宛先は既にRREQを受け取っているために送信元へのルーティングテーブルができているのでスムーズに送れる)で送り返します。この後は、テーブルに経路がありますのでそれを利用してデータの送受信が可能になります。

上図は、それぞれSは「送り元」を、Tは「宛先」を示しており、左の図はRREQを出してTまで届くブロードキャストを実行し、右の図はブロードキャストで得られた最も短い経路を用いRREPを返し経路を形成しています。下の左の図は、RREPを受けてその確認にRREP-ACKを送っています。右の図は形成されたルートが途切れた場合(この例では、6とTの間)に、それを認識した6のルータがRERRを出して関係するデバイスに通知を出しています。

AODVで管理されているルーティングテーブルのそれぞれの登録情報は、その経路が利用されている場合は、「アクティブ」な状態になっていますが、利用されなくなって一定時間(推奨3秒)が経過すると「無効状態」となります。この状態では、登録情報は完全には削除されていませんので、その後に経路を検索しますと経路情報は再度有効になります。ただし無効状態で一定の時間が経過(推奨15秒)すると登録は完全に削除されます。この状態から再度ルーティングを行うには、ネットワークにRREQをブロードキャストすることから始める必要があります。

5-4) 使用する周波数
(1) 2.4GHz帯 : 全世界で利用
11ch ~ 26chまでの合計16チャネルの割り当てがあり日本を含む全世界で利用されています。ただしこの帯域は、ISM(Industry、Science、Medical)帯と呼ばれZigBeeだけでなく、ワイヤレスLAN 802.11b/g、Bluetooth、家庭用のコードレス電話、電子レンジ等にも使用されています。その意味では、利用する環境によってお互いの規格の電波干渉を受ける可能性があります。通信速度は、最大で250kbpsです。
下図は、2.4GHzのZigBee電波の実分布をスペクトラムアナライザで監視した時のもので、チャネルは11を示しています。11チャネル以外にノイズらしきものが見えますが、これらが同じチャネルに現れて値が大きいと通信に悪影響を与えることになりますのでチャネルを変更するなどの対策を打つ必要が出てきます。
(2) 915MHz帯 : 米国、オーストラリア
902 ~ 928MHzの中で1chから10chの10チャネルが割り当てられており、チャネルの間隔は、2MHzと狭くなります。通信速度は、最大で40kbpsです。
(3) 868MHz帯 : 欧州
868から870MHzの中で1chのみの割り当てです。チャネルの間隔は2MHzと狭く、通信速度は、最大で20kbpsです。
(4) 780MHz帯 : 中国
779 ~ 787MHzを利用し、最大で250kbpsの通信速度を確保できます。
(5) 920MHz帯 : 日本
日本においてZigBeeも使用できる周波数帯として950MHzの割り当てがありましたが、国際的に利用されている920MHz帯への移行が決まりました。
2.4GHz帯と比べて電波としての特性上周波数が低い分だけ同じ送信出力でも通達距離が延びます。またノイズ等で電波の状況が悪い場合でも電波が強い分だけ改善が見込まれます。更に周波数が低い分だけ、これも電波としての特性上物理的な障害物(見通しでない場合)があっても回り込み効果があるために届き易くなります。また周波数帯が異なるので、2.4GHz帯で使用されているワイヤレスLAN(利用頻度が非常に高い)をはじめとするBluetoothその他の機器(規格)の電波の妨害・干渉が減り安定した通信が得られます。
5-5) プロトコルスタック

ネットワークのアーキテクチャー(基本的な設計)を説明する場合、一般的に以下の様に階層(レイヤ)に分けて行います。階層に分けるメリットは、考え方・方式をきちんと整理できること、各階層は別の方式にも流用が可能なために開発の効率化が図れること、新しい方式でも階層ごとに並列に開発が行えること等が挙げられ、多くのネットワークの規格で採用されております。

通常下位部分に示すのは、物理的な内容(この場合にはワイヤレス通信のハードウェアのインタフェース)で、上位に行くとアプリケーション(人間に近づく)を示します。下図は、大きく3つに分かれていますが、この後それらの説明を行います。

IPネットワーク(TCP/IP)等の場合には、7階層に分けられ階層毎に明確に機能を分けており、階層の一部を別の方式に置き換え、その他の階層を流用することで効率よく新たなネットワークを生み出しております。

(1) IEEE802.15.4 物理(データリンク)レイヤ
IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)は、米国電気電子学会のことで電気・電子分野における世界最大の学会と言われております。この中の802.15.4は、PAN(Personal Area Network)またはWPANとも呼ばれるIEEEが策定する短距離ワイヤレスネットワーク規格の名称です。
ここでは、物理的なアドレス(MACアドレス)を指定して送信するデータ(アプリケーションが作る)をパケットやフレーム(データのまとまり)として組み立てて相手先に送るとか、相手から受信フレームを受け取り分解する働きをします。分解したデータは、上位層に上げて行きアプリケーションに渡します。
それぞれのデバイスは、64ビットのIEEEの拡張MACアドレスとコーディネータがネットワークの確立時に割り当てる16ビットのショートアドレスで管理します。
(2) ZigBeeアライアンス
ここには、ネットワーク層とセキュリティ層が含まれます。 ネットワーク層では、ネットワークアドレスの割り当ておよびルーティングの取り扱いを行います。その他にネットワークの開始、デバイスの追加や削除、宛先へのメッセージの伝送を行います。
セキュリティ層は、ネットワーク層とアプリケーション・サポート・サブレイヤに対してセキュリティキーの管理およびデータの暗号化と解読を行います。
(3) カスタマ
ここには、アプリケーションが含まれ例えばセンサの場合ですと、センサの種類により温度、湿度、気圧、振動、等をディジタルデータに変換して、結果としメインのコントローラに送ることになりデータが収集されます。
5-6) アクセス方式とスーパーフレーム

ZigBeeは、アクセスの方式としてCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)を採用しております。有線で通信を行うLAN(Ethernet)では、CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)を採用しております。こちらを先に説明しますと、まず使用しているネットワークケーブルに何らかの信号が流れているかどうか(CS : 信号の検知)を確認し、流れていなければ自分が送信を行う方式です。このような方法で複数の送信者がアクセスを行うこと(MA : 複数のアクセス)ができます。もし複数の送信者が同時に送信した場合に信号の衝突が発生し通信ができなくなりますのでこれを検知する(CD : 衝突の検知)必要があります。もし衝突があった場合に、複数の送信者は、お互いランダムに時間をずらして再度送信します。

ワイヤレスで使用するCSMA/CAでは、有線の場合と違うのがCA(衝突回避)の部分です。これは、通信路が一定時間継続して使用していないことを確認の上、誰かが最後の送信終了後に一定時間プラスランダムな時間を加えて送信を開始し衝突を回避する方式です。通信が確実に行われたかどうかは、確認信号を受けることで行います。

ZigBeeでは、ビーコン(時間軸に対する標識のこと)を使用する方法と使用しない方法がありますが、その前にスーパーフレームについて説明を行います。
スーパーフレームは、ビーコンとビーコンで区切られたフレームのことを示します。ZigBeeは、コーディネータによりオプションでスーパーフレームを使用することができます。下図a)は、コーディネータが送るビーコンを利用して境界を付けて、16スロットに分割されています。この中でのCAP(Contention Access Period : 自由競争通信時間)は、自由に競争を行う通信時間ですので、CSMA/CAを使用した通信を行います。またb)図の様にビーコンとビーコンの間にアクティブと非アクティブ時間を設定できます。ビーコンで時間的な同期を取っていれば、お互いのデバイスがアクティブとなっている時間だけを利用して周期的に通信が可能になります。非アクティブ時間では、お互いを待機モードにしておけばそれぞれのデバイスの消費電力を削減することが可能になります。

またコーディネータは、低遅延を目的にGTS(Guaranteed Time Slot : 保証付きタイムスロット)を設定できます。GTSを利用するCFP(Contention Free Period : 無競争通信時間)は、保証付きのタイムスロットですので、コーディネータから許可を得たデバイスだけが自由競争による時間待ちがなくデータを送信することができます。

トータルでは、図c)の様になり、自由競争のCAPとGTS利用の無競争CFPから成るアクティブ時間と非アクティブ時間から構成されています。

話を元に戻しますと、通信方法には以下の2種類があります。

(1) ビーコンを使用する通信方法
上記で説明した通りです。
(2) ビーコンを使用しない通信方法
デバイスが、ビーコンを使用したくない場合には、スロットを使用しないCSMA/CAで通信を行います。コーディネータは、オプションで確認のために確認フレーム送ることでデータの受信を確認することができます。
5-7) 省電力について

基本的には、構成部品が総合的に低消費電力対応であることが必要であることは当然ですが、それに加えて以下に示す様なその他の方法があります。

(1) 適用送信電力
Bluetoothで使用されていますが、受信の信号強度を利用して通信に必要な送信電力を調整する方法です。具体的には、受信強度が強ければ送信電力を通常よりも小さくします。お互いがこの方式を利用すれば、干渉も減ることになり利用環境全体の過剰な強度の電波の低減に貢献できます。
(2) マルチホップ
ZigBeeでは、マルチホップ(多段に渡るリレー)が可能ですので、エンドデバイスは、最低限の送信電力で中継デバイスまで届けば通信が可能となります。中継の段数が増える欠点はありますが、エンドデバイスの省電力に貢献します。特に電波は、送信電力を2倍にすれば通達距離が2倍になる訳ではなく、一般的に電力を4倍にすれば距離は2倍になる様な関係になります。例えば、ホップ数を3段にする所を電力だけでカバーしようとすると9倍もの送信電力が必要になります。またそれだけ他への妨害が大きくなることを意味しますので、理想的には極力送信電力は小さいことが望まれます。また送信電力をやみくもに大きくすることは、電波法の関係もありそう簡単には実現できません。
(3) 通信時間の短縮
常に送受信のモードにしておくのではなく、待機モードしておけばその分だけ大幅に省電力になります。スーパーフレームの所で説明しましたビーコンを使用する方式でアクティブ時間と非アクティブ時間の比を大きくすれば実現が可能です。ただし総合的なスピードは遅くなりますが、これは使い方に依存します。
ZigBeeの送受信時の電流が20 ~ 30mAで、待機時の電流が数μAの製品がありますので、待機時は10,000分の1程度にすることが可能になります。ただしエンドデバイス用には可能ですが、ルータやコーディネータは、常に監視が必要ですので適用が困難です。
5-8) ZigBeeで使用されるアドレス類

ZigBeeでは、デバイスとかアプリケーションを特定するのに番号を振って取り扱いますが、それには以下の種類があります。

(1) PAN識別子(PAN ID)
  • PAN ID : 複数のデバイスが存在するそれぞれのネットワーク・グループを認識するための識別子で、16ビット(65,536の種類)で表示されます。
  • 拡張PAN ID : 世界で唯一の64ビット(4,294,967,296:約43億)のIDで、このIDは別のネットワークのPAN IDと衝突するのを回避するのに使用されます。
(2) デバイスのアドレス
  • 64ビット拡張MACアドレス : ハードウェアに固有に割り振られるアドレスです。
  • 16ビットショートアドレス : 一つのネットワークで管理者(コーディネータ)が動的に割り当てます。
  • 16ビットグループアドレス : アプリケーションで指定して利用されます。
ZigBeeネットワークは、データ量を減らすために主に16ビットのショートアドレスを用いて動作します。
下記に通常のMACフレームのフォーマットを示します。ここで「オクテット」と書いてある部分は、8ビット(1バイト)を示す言葉でそのフィールドが用いるサイズです。「アドレス」のフィールドで「0 / 2 / 8」とあるのは、0ビット、16ビット、64ビットのサイズをとり得ることを示しています。
以下は参考になりますが、この表から、PAN IDは、0ビット、16ビットが使用されます。ヘッダーとフッターのフィールドを除く「フレームペイロード」は、実際に有効なデータの部分を示します。
またFCSは、データパケットやフレームのデータが正しいかどうか、データが何らかの問題で化けていないかをチェックするフィールドです。送信側では、ヘッダーとペイロードに対してある論理演算を行いその計算結果をここに記載します。受信側では、FCSも含めて同じ論理演算を行い結果が「0」になればエラー等がなかったことになります。
(3) エンドポイントアドレス
基本的にアプリケーションは、センサ入力をディジタルデータに変換し出力する機能を持っています。一つのZigBeeセンサネットワークノードに最大240のアプリケーションを実行させることができ、各々のアプリケーションは、ネットワークのエンドポイントと言われます。例えば環境センサは、温度、湿度、気圧という別々の要求を含むことがあります。
このアドレスは64bitのIEEEアドレスと16bitのネットワークアドレスに加えて1から240が割り当てられますが、エンドポイント0は、センサノードのZigBeeセンサネットワークデバイスオブジェクトのために予約されています。
241から254は、将来の予約として保持されます。
5-9) スリープ状態(待機状態)からの回復時間

ZigBeeデバイスは、電源を投入してから30ms(0.03秒)で立ちあがり、正常に動作ができる状態になります。またスリープ(待機状態)から完全に動作できる様になるのに15ms、アクティブな子機へのアクセス時間は、5msです。
これをBluetoothと比較しますとその時間は、電源投入 : 3秒、スリープ : 3秒、アクティブな子機へのアクセス : 2msです。

この比較で大きいのは、電源投入時で100倍違います。スリープからの回復では、200倍違います、この違いが具体的にどの様に影響するかですが、例えば3秒に一回データを送る場合、Bluetoothは立ち上がりが3秒ですので、スリープ状態に入ることはできませんのでフルに動作していることになります。一方ZigBeeの場合には、立ち上がり時間15msと実際の最小の送受時間約5msを加えて、3秒あたりの動作時間が20msとなりますので3000/20=150となります。

次に10秒の間隔の場合には、Bluetoothは10秒あたり動作時間が約3秒、ZigBeeは20msですので、比較しますと3000/20=150となります。
逆に1秒間隔の場合には、Bluetoothは1秒、ZigBeeは20msですので、比較しますと1000/20=50となり、間隔が短くなるとその差は小さくなります。回復時間はこのような所で影響を与え、消費電力の節約に貢献します。
またテレビとかAV機器を遠隔制御(リモコン)する場合に、ZigBeeの20ms(0.02秒)の遅延はほとんど気になることはありませんが、Bluetoothの3秒は操作に違和感が生じます。

5-10) 用途の詳細

用途に関しては、各種団体で色々な議論もあり多数のアイディアが出てきております。また用途に特化した規格も制定され、関係団体が推進しております。ここでは詳細の説明を省略して項目のみを取り上げます。

(1) 民生用途、情報家電
  • 家庭内電気機器の遠隔制御
  • セキュリティ、空調制御、照明制御
  • TV、ビデオ、DVD/CDなどのリモートコントロール
  • 使用目的や利用人数に応じて空調、照明の自動制御、間仕切りの変更
(2) センサ・防犯・セキュリティ
  • 煙検出器、人感センサ、温度/湿度/CO2モニター
  • 不正侵入・盗難検知、不審者威嚇、タグによる入退室管理、警報灯、警報スイッチ、窓開閉センサ
(3) 医療・福祉
  • 病院のセンサ : 心電計、健康管理、医療・健康、体重計、血圧計、ナースコール、心拍数
  • 家庭でも同様な利用が可能
(4) ビルディング オートメーション
  • セキュリティ、空調制御、自動メータ読み取り、照明コントロール
(5) 産業用用途
  • エネルギー管理、製造管理、環境制御
(6) 防災・防災予測
  • 自動監視・警報(自然、住宅)
  • 火災 : 温度、煙、有毒ガス、建物の破損、倒壊、警報、通報、ガスメータ遮断
(7) 自動検針
  • 電気、ガス、水道の自動検針
  • マンション等のバルブシャフト内のメータの自動検針
  • 地中に設置された水道のメータの自動検針
  • 物置、自転車、自動車等によるメータ遮断時の検針
(8) 工場、病院、倉庫等金属装置の密集する場所
  • 大型機械装置の振動、歪み監視
  • 大型タンクの圧力、温度、振動、歪みの監視
  • 密集した配管の流量、温度監視
  • 溶鉱炉内の温度監視
  • 配電盤内のスイッチ制御、状態の監視
  • 金属製のロッカー内の装置制御、資材監視
(9) 設置間隔を短くできない装置間の情報伝達
  • 電柱上の設置の異常を送信
  • 橋梁、トンネル、道路、鉄道レールなどの構造物監視
  • 屋外のモニタリング
  • 子供の安全安心
(10) 物流・マーケティング
  • 売れ行き(時間、数)、商品の期限、補充時間、在庫数
  • 商品の保存状態 : 温度、湿度、振動
(11) 交通
  • 温度、湿度、雨量のデータ収集
  • 車の衝突防止
  • 緊急車両のための信号の優先制御、一般車両への警告
  • 駐車場の空き情報提供
(12) 食・農業
  • 日照度、温湿度
5-11) 関係する団体
(1) IEEE802.15.4関連
IEEE

IEEE (Institute of Electrical and Electronic Engineers)

主にWPANの物理層を中心にこれまでに決定されたもの、および現在審議中のものを以下に示します。
IEEE 802.15.4-2003 ZigBeeなどの物理層
IEEE 802.15.4a-2006 物理層の改良
IEEE 802.15.4b-2006 MAC層の改良、ZigBeeの曖昧さの解決、不要で複雑さを削減、セキュリティキーのフレキシビリティーアップ
IEEE 802.15.4c 中国向け物理層の改良(780MHz)
物理層の改定は、中国におけるWPANの利用に向けて314-316MHz、430-434MHz、779-787MHz帯をオープンにした中国の規格変更を提言するためのものです。
779-787MHz帯は、IEEE 802.15.4規格の中での利用が検討されるべきであることが決まっています。
IEEE 802.15.4d 日本向け物理層の改良(950MHz)
これは、802.15.4-2006の標準に改定を加えるためのものです。提案された改定は、新たな物理層を定義することで、MACへの変更は、日本における新たな周波数割り当て(950MHz -956MHz)をサポートするために必要です。改定は、日本の政府の法令で示された新たな技術的な条件に完全に従う必要があります。この改定は、この帯域の中のパッシブ・タグ・システムと共存します。
IEEE 802.15.4e 工業用市場を目指したMACの改版と機能追加
この改定の目的は、802.15.4-2006のMACに対して産業用市場をサポートするため、また中国のWPANの中で提案されている修正とのコンパチビリティーを容認するために改善、および機能の追加を行うことです。
IEEE 802.15.4f アクティブRFID
IEEE 802.15.4g スマートグリッド、SUN(Smart Utility Networks)対応
SUNの役割は、最小のインフラと数百万台の固定のエンドポイントを使用して、大きくて地理的に多様なネットワークをサポートする能力のあるスマートグリッドネットワークのような、大規模なプロセス制御を行うアプリケーションを促進する世界標準を提供するために802.15.4の物理層に改定を加えることです。
(2) ZigBeeアライアンス
米国カルフォルニア州に所在する非営利団体で、IEEEで規格化されたIEEE802.15.4を物理層として、ZigBeeのネットワーク層、アプリケーション層に関して仕様書を作成しました。ZigBee Allianceは、2002年10月に設立が発表され、最初のZigBee仕様Ver.1.0は、2004年12月に決定されて2005年6月から一般に公開されました。
仕様の概要は以下の通りです
■ アプリケーション層仕様
アプリケーション・サポート・サブレイヤ、ZigBee デバイスオブジェクト、製造業者の定義するアプリケーションオブジェクトから構成されます。
各アプリケーションの呼び出し手順は「プロファイル」として規定されており、一つのエンドポイントに対して一つのアプリケーションプロファイルを記述します。プロファイルには例えば、照明機器用の「Lighting」があります。プロファイルはZigBee Allianceだけでなく、ベンダーが独自に定めるものもあります。
■ ネットワーク仕様
ネットワーク層では、IEEE802.15.4MACサブレイヤの正確な動作を確保する機能とアプリケーション層に適切なサービスインタフェースを提供します。
主なサービスは以下の通りです。
  • 新規デバイスの設定
  • ネットワークの開始
  • ネットワークへの加入、再加入、離脱
  • アドレッシング
  • ネイバディスカバリ
  • ルートディスカバリ
  • 受信制御
  • ルーティング
■ セキュリティサービス仕様
ZigBeeスタックで利用できる様々なセキュリティサービスについて詳細に規定しています。ZigBeeに提供されているセキュリティサービスは、キーの確立、キーのトランスポート、フレームの保護、デバイスの管理等の方法がふくまれており、どのように使用する必要があるのかの機能説明を提供しています。
(3) ZigBee SIGジャパン
ZigBee SIG-J
ZigBee SIGジャパンの設立企業は、すでにZigBeeの仕様策定を進めているZigBee Allianceにも加盟していることから、同組織およびその他の地域の関係団体とも密接に連携を取りながら、日本国内での啓蒙活動と、加盟企業の共同による市場調査・普及活動を積極的に展開してきましたが、2014年12月当初の目的を達成したため解散しました。(ZigBee SIGジャパンからの抜粋)
(4) RF4CEコンソーシアム
(Radio Frequency for Consumer Electronics)
設立 2009年3月
設立メンバー ソニー、パナソニック、フィリップス、サムソン
目的 AV機器とリモコン間の双方向通信などの高度な機能を実現するため、ワイヤレスを活用した通信方式の策定に取り組む
■ 利点
1) 非見通し環境
従来の赤外線リモコンは、電波よりも周波数の高い光に分類されますが進み方が直線的で、同時に物体を突き抜けることはほとんどありません。従って下図のようになんかしらの障害があると「透過波」はほとんどなくなります。また図中の「回折波」もほぼありません。反射波に関しても表面が固く、滑らかでないと少なくなります。基本的には、リモコンは目標物の方向を向いていることと「見通し」であることが必要になります。
一方でワイヤレスを使用する場合には、光と比べて「反射波」、「回折波」が多くなり、物体の厚さ、材質によりますが「透過波」も存在します。また電波自体が一方向にだけ輻射されるのではなく、ほぼ全方向に輻射されますので、リモコンを必ずしも目標物の方向に向ける必要がなく、更に電波の届く割合が高くなります。このようなことから、ワイヤレスを使うことで「見通し」の制約が無くなり、DVDレコーダの前にいなくとも録画予約を容易にできるようになります。

2) 双方向通信
前述の操作で「予約の操作が問題なくできたかどうか」の確認が必要となります。
この様なDVDレコーダの状態を確認するために、双方向通信の機能が使われます。双方向通信は通信規約にてサポートされているので容易に活用できます。
3) 応答速度
RFリモコンは、応答速度が速く高い信頼性を持っており、現在主流となっている赤外線リモコンに替わるものとして期待されています。
4) 暗号化
AES-128という、米国標準として技術的にも認められた暗号化を利用でき、隣接する家庭間との混線を防ぐことが容易となりました。更にセキュリティを担保したことで各種有料サービスに関わる操作の実現・実装が可能となります。
5) 省電力
赤外線リモコンよりも省電力になります。
6) 相互接続性の確保
標準化をすることで、異なるメーカ間の機器であっても容易に接続できることが期待されます。
7) AV機器以外の用途
同規格はAV機器のみならず、自動車のキーレスエントリーなど幅広い製品に向けたもので、低コストかつ実装が容易な点が特徴です。
■ RF4CEとは
RF4CEは、IEEE802.15.4で規定されている物理層とMACはそのまま同じように使用しますが、その上位に位置するネットワーク層のZigBeeの規格が異なります。RF4CEでは、下図のようにデバイスとしてTargetとControllerの種類が定義されています。Targetは、ネットワークでは親機に相当し、Controllerは子機に相当します。リモートコントロール操作を行う側から見ますとControllerは、リモコンを操作する側となり、Targetは、それを受けて制御を行うための被制御機器になります。
Targetは、ネットワークでは親機に相当しますので、ZigBeeではコーディネータの役割を果たします。通常ZigBeeには一つのネットワークにコーディネータは一つしか認められませんが、下図に示す様に1つのネットワークに複数のTargetが許されます。
このことにより、上図にはPAN1においてTVとDVDの二つのTargetが存在しますが、これらを多機能の一つのリモコンから両方とも操作することが可能になります。また上図が、CDのTargetにもなれる様に、多機能リモコンで別の(複数の)ネットワークの機器を操作することが可能になります。
RF4CEでは、パワーセーブモードに入ることでTargetもControllerも 同時にパワーをセーブするメカニズムが定義されています。ZigBeeの規格では、コーディネータやルータは、いつでもアクセスを受け付けることが必要ですのでパワーセーブモードに入ることが困難ですので、この点は異なります。パワーセーブモードは、アプリケーションのプロファイルの制御の元に行われます。